市長と議会の対立激化、行橋市。市民サービスに少なからぬ影響が出る。

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全国的にもレアケースなのですが、当初予算(行橋市)が否決されておりましたので、そのままだと4月1日に予算が執行できなくなります。

扶助費や公債費も含めて否決しているため、生活保護費や職員人件費、市職員の人件費も止まります。原理原則上は救急車や消防のガソリン代すら払えないし、公民館や小中学校の電気も止まる。当初予算とは、ほぼほぼ全ての市民サービスの”年間予算”であり、執行できない状態ともなれば市民生活に甚大な影響を与える。

関連
【全国的にも異例の混乱】小中学校の光熱費・水道代すら止まる、”当初予算の否決”。市長辞職勧告も決議、行橋市。

 

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行政サービスを全面的に停止する権限を、議会は持つ

税金をサブスクに例えるのは気が引けるが、例えばamazonプライムみたいなものだとして、先払いでサービス対価を納めているようなもの。実は『行政サービス=無償』ではない、有償なのだ。それが強制加入であるがゆえに(徴税権)感じにくいだけで、コスト自体は発生している。

勝手にお金をとられるのが税金(納めないと罰せられるのはご存知の通り)なのだが、それを身勝手に独善的に使われるというのも頭にくるだろう。そのために市長選があり、そして市議選がある。市長には「提案権」と「執行権」がある。”こんな風に使いたいんだけど?”と提案してくるのだが、対価を支払った市民全員から押印を求めるわけにもいかない。そこで出てくるのが市議会議員で、市民の代理として「いいよ」とか「悪いよ」とか賛否を示す。言葉としては聞いたことがあると思うけれども、市民の声の代弁者なのである。実はそのまま、だ。

市長側は(こう使いたいよ)と提案はできるものの、実は決定権は持っていない。決定は、議会で行う。それを議決と呼び、市民の総意という扱いになる。市長が提案してきた予算に対し、良いとか悪いとか決めるのが議会である。私たちが立ったり座ってりしているのがそれだ。

年間予算を単純否決するというのは、全ての行政サービスを停止するという意味になる。原理原則上は、救急車や消防車のガソリン代すら入れられない。小中学校の光熱費・水道も止まる。公民館を含む公共施設の電気も止まる。市職員の人件費はもとより、生活保護費なども全て。

そんなことあるの?と思うかも知れないが、当初予算の否決は凄まじいまでの市民生活への影響があるため、全国1700自治体議会を見ても滅多にない。あるにはあるが、数年に一回とかいうレベルで、前回は2020年の宇陀市が最後だった模様。

議会とは、ブレイカーみたいな機能も有している。当初予算の否決とは、市長に対する全面的な否定である。

 

 

 

本当に市民サービスが止まるのか?救済処置としての専決処分・再議

では、市民生活が本当に止まるのかと言えば、そうはならないよう救済処置もある。日本の法律はよくできている。

普通はそういう事態にならないよう、(市執行部には)再議に付したり専決処分という方法が法で規定されています。再議とは「もう一回、お願い!」と市長側がワンチャン頼み込むみたいな方法。専決とはより激しい方法で「もう議会には聞かない、ヤバイから俺が決める!!」みたいなイレギュラーな方法。

再議に付さない、専決もしない。市長の怠慢だ・・・、ゆえに議会からは、市長側の責任だと述べたい主張したい方もいる。今回ばかりはそうとは言い切れない。事態を複雑化させてしまうのは、同日付け(今月20日における定例会)における市長辞職勧告だ。

当初予算を否決すると同日において賛成多数で市長辞職勧告を決議。法的拘束力はないものの、この状況下においては専決(議会に付さない)は現実的にはとりえない選択肢となった。少なくとも同様の主張を市長サイドがした場合には、一定の正統性を与えることとなってしまう。再議に付したところで過半数が得られないのは自明の理であり、また(議決を得るべき)議会から辞職を勧告されている市長が、議会に諮らずに専決するとは何事か!?という批判を浴びるからだ。

以上の理由により、行橋市においては「専決」および「再議」は、実態としては選択できない状況にあった。【①当初予算の単純否決 + ②市長辞職勧告決議】がセットで提出された事例というのは、果たして存在するのだろうか。法的拘束力を有する不信任決議の場合は、市長側は議会を解散することもできるが、辞職勧告決議と予算否決というのは、再議潰し・専決潰しと言っても過言ではない。
よって法で規定された、市民生活に影響を与えないために救済処置は存在しないという、かなり深刻な事態に突入していた。(本当に珍しいと思う。)

4月1日なれば、場合によってはゴミ収集ぐらいは本当に止まる危険性もある。正直、何が起きるのか私にも分からない。しかし、本日の総務員会において所感部長に問うたところ、原理原則上は止めざるを得ないというのが答弁であった。公式のものである。

 

 

 

3月臨時会の招集

そのため本日、新たに臨時会が招集されました。
30日の議会招集、残された31日には本会議の議決を得ねばならない。ギリギリではないか!と怒る方もいるかもしれませんが、20日が当初予算の否決。21日(火)は祝日で、22(水)、23(木)、24(金)しかない。この3日間で270憶近い予算のヒアリングを再度行う必要があった。市職員にとってはたまったものではなかっただろう。

議会には骨格予算を諮る必要があり、義務的経費などを抽出する作業が必要だった。議案として配布されたのが27日(月)である。本会議招集の3日前には議案配布を終えておかねばならぬから、30日の招集より他に方法はなかった。

市職員はたまったものではないと述べましたが、理由はこれが激務というだけではありません。市民からの要望に応じ「あれをやろう」「これをやろう」と組み立てていたものを、数か月スパンで作成した年度予算を「これも潰せ」「あれも外せ」と、市民サービスを除去していくだけの作業であり、まったく建設的ではなく、とても後ろ向きな作業だからです。これで短納期の激務という、かなり可哀想な状態にありました。

本日30日において、骨格予算を審査するべく議案の上程を終えました。議案に対する質疑が相次ぎ、上程だけで2時間かかりました。

他の議員からは「これは政局ではない!」とか「市民生活に影響を与えるのは本意ではない」等の発言もありました。しかし当初予算を否決した際において、賛成討論を行ったのは私一人であり他の議員は市民生活等に言及しての発言はしていないことは明確に述べさせて頂きます。また議場で私はそのように発言しました。

市民生活に対する深刻な影響を訴え、せめて議案修正をと私は主張しましたが、本会議における議事録の残る場において、その主張を明確に行ったのは(本来は反市長派であるはずの)私だけであり、それは賛成討論でした。議事録に不存在なものを、議会側が後付けで理由として述べることは、一人の議会人として容認できません。

当初予算の単純否決時において、議会側はそのような主張は行っていない。

 

本日の臨時会において、私も議案に対する質疑を行いました。投資的経費としていま上程された予算には、小学校通学路の安全対策の事業(前田綿打ち線)やコスメイト行橋のホールの吊り天井の設計委託費は含まれていないことを確認しました。議案に対する質疑において、執行部側より議場で答弁を得ています。

傍聴席には複数のテレビカメラもありました。どの局だろと思いましたが、九州朝日放送だったようです。yahooニュースになっていました。まぁ、報道の扱いとしては浅いものであり、辞職勧告決議案とセットであるがゆえに再議・専決が実態として封じられていることや、31日中に議決を得られない場合にはヨーロッパみたいなことになりかねない等の部分は触れられていません。恐らく議会手続きに詳しくない方が取材にあたったのでしょう。

 

 

 

報道の紹介

NHKと九州朝日放送です。

 

新年度予算案否決された行橋市 臨時市議会に骨格予算案提出

行橋市では市長と議会の対立を背景に、今月、議会で新年度の予算案が否決されました。
4月1日から新年度が始まるのを前に30日臨時議会が開かれ、否決された予算案から政策的経費などを除いたいわゆる骨格予算案が提出されました。

行橋市議会では工藤市長と議会の対立が続く中、今月20日、市が提出した一般会計の総額で302億円余りの新年度の当初予算案の採決が行われ、賛成少数で否決されました。

このため新年度まで残り2日となった30日、市は臨時議会を招集し、否決された予算案から政策的経費や投資的経費を除いた276億円余りのいわゆる骨格予算案を提出しました。

臨時議会の会期は31日までの2日間で、本会議では残された予算と削られた予算がそれぞれ妥当か慎重に審議する必要があるとして議員が説明を求めました。

予算案は31日の本会議で採決が行われる予定で、新年度を迎える前に予算を成立させられるかが焦点です。

行橋市では今月の定例議会で工藤市長が提案した副市長の人事案も否決され、来月から副市長が不在となる見通しで市政運営に影響が広がっています。

 

 

 

市長と議会が対立 行橋市長が新年度予算案を再提出

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=mGPjSj7f_A4]

新年度の予算案が否決され、市長の辞職勧告決議案が可決されるなど、市長と議会との対立が続く行橋市で、工藤市長が30日改めて議会に一部を削減した予算案を提出しました。

行橋市の工藤政弘市長は先月、過去2番目の規模となる、300億円を超える新年度一般会計当初予算案を議会に提出しましたが「市長の独自カラーがない」などとして、今月20日否決されました。

行橋市では去年10月、職員採用に関する個人情報を工藤市長が独断で警察に提供していたとして議会と市長の対立が表面化し、20日には市長の辞職勧告決議案が可決されています。

工藤市長は、30日開かれた臨時議会に「市民生活に最低限必要なもの」として約276億5000万円の予算案を再提出しましたが、市議からは厳しい質問が相次ぎました。

「自身の前から議員時代から言っている政策については再度入れ込んでいる。これについてどのような観点から予算編成をしたのか」

「市長はなぜ暫定予算ではなく骨格予算案、しかも2日間しか余裕のない時期に議会を招集したのでしょうか」

再提出された予算案は31日採決される予定です。

 

 

 

 

 

市民生活に影響はあるのか?

では、骨格予算が審査され、議決を得ることが(31日中に)できたとして、市民生活への影響がゼロかと言えばそうではありません。骨格予算とは投資的経費などを除いたものであり、では投資的経費が何かと言えば道路整備などが含まれます。かなり危険な状態の通学路があり、市内で最も大きな小学校なのですが、その細街路の道路工事を全市政から継続していたのですが、これらの予算を「外した」骨格予算が審査されています。

4月1日以降は、「鍬一本、いれられない」が実際のところです。仮に道路の陥没などがあれば予備費で対応はされますが、工事中のものは、予算が切れた時点でそこで止めるしかないのです。この通学路以外にも工事中の個所はあるわけで、”続けて整備する”という部分が落ちましたので、6月の定例会で再度執行部があげてくるまでは、ゆっくり三か月は止まります。嘘でしょ?と思うかもしれませんが、本日の委員会審査においては「どれとどれが止まる」という説明を市側より受けた次第です。

 

私が所属する総務委員会所管分において、少なくとも6月議会までは執行できなくなっている予算について紹介します。下記はその一部です。

防災行政無線交信工事

市内全域(110か所)のうち、23か所の工事。
予算額は9000万円で、これは防衛予算を活用したもの。10/10とありますが、これは補助率です。つまり市の手出しはゼロであり、全額国費というわけです。

国から頂いた予算で約1億近い工事をする予定でしたが、結果としては国に突き返すような感じになってしまいました。国側との折衝(次の議会にまわす)などの進捗はどうなっているかを委員会で質したところ、そこまでは手が回っていない様子でした。

この短納期では対応はできないだろうなとは覚悟しておりましたが、あくまで市民の防災のための予算です。

これは「義務的経費でない」として、骨格予算として上程する際に外した予算です。
(少なくとも6月までは実施されません。)

 

防災計画策定事業

災害対策基本法の一部改正、国の防災基本計画、県の地域防災計画の改定等に合わせた更新。

こちらは市の単独事業になります。当然ながら、数か月スパンの遅延は生じます。最終的には年度内に実施できると踏んで予算から落としたのでしょうが、こういう作業が「骨格予算にする」というものになります。

これも今議会ではなくなった事業です。

 

行橋市消防の備品

行橋市には高速道路が走っています。高速道路の事故においては、本来は高速道路の事業者(ようはネクスコ)が本来は消防能力を備えておかねばなりませんが、実態はそれ専用で整備しまくるわけにもいきませんから、各自治体の消防に振られます。

そのため、支弁金が設けられており、そのお金で購入予定だった資機材です。こちらは、今議会でなくとも次以降で購入できるというものなのでしょう。かと言って、この予算を消防が外したかったわけではないと思います。

帯電圧手袋について問いました。太陽光発電などの火災にも使用するものではないか?と問うたところ、主としては高速道路上の電気自動車の事故が発生した場合に備えるものだが、実態としては同じ用途だそうです。手袋の数は揃っているのかを質したところ、そもそも耐用年数が5年程度しかないことが分かりました。現在の充足数については、その場では回答を持ちえていない(急な議会であった)とのことでしたので、それ以上は問うことはしませんでした。

こちらも、六月以降でなければ物資として届くわけではありません。

 

非常備消防(消防団)の車輌

経年劣化(購入後21年が経過)した消防団のポンプ車を更新配備するための予算。意外に思うかもしれませんが、1000万円近くします。単に車体だけではなく特殊な装備がついているからです。

こちらも今議会ではなくなった予算です。
消防に質したところ「今のところは動いている」とのことでしたが、「早期に更新したい」とのことでした。

こちらについては年度内での完了が困難となる可能性が示唆され、ひやっとしました。消防団の車輌の「ベース車両」が入手できない(新車が買えない)可能性があり、応札があるかの見通しが立っていないようです。

その場合は繰越するしかないのですが、ならばこそ3月議会の当初予算に盛り込んでおくべきだったと感じました。

 

あんま針灸

こんなものまで?と思うかもしれません。

かつて市で国民健康保険を見ていた際には、針・灸も対象としていました。しかし県単位での国保の広域化がなされた際、広域では見ないということになり、自治体単位で実施するようになった事業です。京築地区では行橋市のみが針・灸を見なかった時代があるのですが、のち(広域化済みの国保ではなく)市の単独事業としても針・灸の補助を行うようになりました。

この予算は、(国保から)後期高齢者に移行する際に、今まで同様に針・灸の補助を同様に行うという市の単独事業だったんですが、本議会ではなくなりました。市側に質したところ、4月から(補助がなく)高いサービス料を受けたとして6月以降に予算が通ったとしても過去に遡って払ってあげるわけではないのですよねぇ?つまり遡及することはできないですよね?と、悔しい思いで問うたのですが、当然、遡及はいたしません。

どういうことかと言えば、近隣自治体の方が行橋市内の針・灸でサービスを受けた場合、市外の方のみは補助が効いて安価であり、行橋市民だけが高額なサービス料を支払うと言う謎の状況に陥ったということです。

 

あげればきりがありませんが、本日はこのような、市民サービスとしての「何と何がなくなった」というものを委員会で審査し続けていました。とても惨めな気がしました。他の議員はなにを思ったか知りませんが、私は「当初予算は通すべき」と主張してきましたし、明確な賛成討論を行っています。

少なくとも一部を議会で修正して予算を議会側から提案すべきということも、議場で主張しています。一課一係を落とす程度であれば、普通にやれたはずだ。予算の単純否決を行ったのは、決定機関である市議会である。そのことは明確な事実である。

私は、今日の委員会が、とてもつらかった。
それは私の感想なのだから、正直に言わせてもらう。各議員がそれぞれ思うことがあれば、好きに発言すればいいと思う。当初予算の単純否決は、市民から議会が責めれる振舞いだと思う。市長への批判であれば、別の政策的な手段を用いるべきだったと今でも考えている。

いずれにせよ、上記の予算は(骨格予算とする課程で)今議会からはなくなりました。

 

 

 

本日の委員会審査は終わらなかった。

とは言え、この骨格予算が通過すれば、直撃的な市民生活への影響(ゴミ収集が止まるとか。)は避けられることを議場で確認はとっております。しかし、それでも安全対策等の遅滞は生じるわけで、市長側・議会側どちらの責任と言及することは控えますが、誇りをもって述べさせて頂きたいのは決定権は議会にあるのです。予算の提案権や(議決済の予算に対する)執行権のみを市長は有しますけれども、これらの事業が遅滞する理由については、私は議会側の責任もあるという立場で議案質疑に臨んだ次第です。

さて、31日に本会議で議決は得られるのでしょうか。
状況は正直に言うと不透明です。

 

行橋市には3つの常任委員会があります。私が所属する総務委員会は、全ての議案審査を完了し、取りまとめ採決まで終わっています。
文教厚生委員会は、延長をしたと伺っているので、恐らく審査を終えたのではないかと思います。私は所管委員会の審査を終えてのち、統一地方選の応援にまわったので詳細は分かりません。

理由は分かりませが、建設経済委員会は議案審査を終えず、委員会の延長をしないままに午後には閉じてしまいました。まだまだ議案は残っているはずですが、どういう理由でそうなったのかは分かりません。

全ての常任委員会での審査を終えてのち、本会議に議案を戻してから「本会議での採決」になるのですが、万が一、委員会審査が終わらない場合には31日での採決はできません。

(慣例に名なりますが)財政を所掌する総務委員会は、他の委員会が閉じてのち取りまとめに入ることになっています。よって、他委員会の審査状況について、当委員会でも話題になった次第です。

こちらも救済処置は存在しており、議長の職権で委員会審査を強行に終わらせて本会議に戻すという手続きはあったと思います。しかし、議長がそれを行うかは分かりません。

明日(31日)は、委員会日程および本会議日とはなっていますから、委員会審査が2日なったとしても日程通りなのではありますが、本会議が何時から開会できるかは不明です。よって終わる時間も見通しとしては、ございません。

 

正直、3月31日において、骨格予算が成立するかどうかは決まっていません。
「そんなことがありうるのか?」と思うかもしれませんが、現実に起きています。

 

果たして市民はどう感じるのでしょうか?

 

 

 

 

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  1. ロード より:

    骨格予算は通ったようですね。
    二元代表制を理解していない反対派は、気持ちよく市長を攻撃していましたが、返り血を浴びてふと我に返ったようですね。
    そう、市民のためではなく、ただ己の身を案じただけです。

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