【訃報】無責任艦長タイラー、原作の吉岡平先生、死去。駆逐艦そよかぜへの追憶

 

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いまの生き方に、実は深く影響を与えた作品がある。無責任艦長タイラー。まだ子供だった私が、初めて買った活字の書籍。いわゆるライトノベルである。

私が「駆逐艦」という言葉を明確に認識したのは、実はアニメだった。そして駆逐艦という言葉を鮮烈に意識させたのは、ライトノベルであった。

ジャスティ・ウエキ・タイラー、かなりいい加減な男が乗る駆逐艦「そよかぜ」である。オンボロの、老朽化した艦。アニメ版は1993年1月25日~7月19日。いまから30年も前のこと。私は当時、14歳、まさに中学生。いわゆる絶賛中二病だった。

アニメ版の映像は素晴らしく、中学生にとっては衝撃的だった。あらゆる戦闘艦のデザインは恰好よく、ワクワクして見たのを覚えている。VHSのビデオに録画し、何度も繰り返し見た。当時はテレビデオ?みたいな。いまだとありがちな設定なのかもしれないが、そのキャラ設定は斬新だった。少なくとも私は知らないタイプの主人公だった。

まず恰好よくない。性格はいい加減、運に頼る。
けれども頑張るときは、地味に頑張る。タイトル通り無責任なため正義を掲げたりはしないけれど、人の道に外れそうなときは軍人であることの責任を平気で放り出してしまう。視聴者から見ても、子供から見ても、どちらかと言えばダメ人間。けれどもたまらなく愛嬌がある。

アニメ版から入った私は、やがてラノベに手を出す。その著者が吉岡平先生だった。食い入るように読んだ。会ったこともない。憧れていた。亡くなったのは62歳だったらしい。私よりも20個ほど上。つまり私が中学生のときに作品を見た際には、30代半ばだったのだろう。凄まじい才能だ。

アニメの中のシーンで鮮烈だったシーンをいくつか。
子供の記憶なのであやふやな部分もあるが、繰り返し見ていたのでそんなには間違っていないと思う。少なくとも私の思考パターンに深く影響を与えた、個人的なエピソードとしては下記のようになっている。(脳内では。)

 

いい加減に生きてきた年金係の男、タイラー。たまたま届けた先で、爆弾を抱えたテロリストと遭遇。あえなく捕虜にされるも、いい加減に振る舞ううちに犯人が自滅。栄誉を称えられ、なぜか駆逐艦の艦長に栄転される。

しかし配属された艦は、惑星連合宇宙軍の中でもオンボロな、老朽駆逐艦。艦名は、戦闘艦らしからぬ「そよかぜ」というもの。乗員の気質もいい加減、まさに底辺公務員というか、乗船している海兵隊はモヒカンだったり、まさにヤンキーみたいな。戦闘機パイロットは無口な男と、双子の若い娘。誰もがいい加減で、厳格な軍規があるはずの軍人とは対極的な者たちだった。

 

ある意味では誰もが期待していない、駆逐艦「そよかぜ」。
奇跡的な戦果をあげまくっていく。アニメならば、いやアニメだからこそ、そこには深い軍略があるはずで、もしくはあるべきである。このアニメには、それがない。せっかくの恰好いいメカデザ、そこに惹かれた中学生の心を折る。基本的に、勝利の要因の多くは「運」である。しかも主人公および関係者も自分でビビっている姿が衝撃的だった。

いま私が「なんとなく、駆逐艦でもいいじゃね?」「勝てるならば、乗り慣れた艦でいい」ぐらいに思っているのは、この老朽駆逐艦の存在がある。その艦長のいい加減さ、そして後段でのタフな精神力、ルール無視の戦法とか、ぶっちゃけ影響を受けている。

恐らくタイラー艦長としての初陣だと思うが、敵軍の神聖ラアルゴン帝国の大艦隊に遭遇。勝ち方の方法は、子供にはショックなやり方だったと思う。(アニメ版か小説版かは忘れた。)敵の大砲が恒星に当たり、地滑り的に勝っただけという謎の勝ち方だった。見ている子供も喜んでいいのか迷う、主人公たちも微妙な感じだったような。

 

いろいろあって、敵軍の皇帝を捕虜にしてしまう。まだ若い女性という設定で、敵軍の皇帝を捕虜にしたことは功績として誉められてしまう。が、なんか可哀想みたいな理由で解放。当然、めっちゃ怒られる。子供心ながらに、そりゃ怒られるよ、と。鮮烈に覚えているのは、スター少佐が「皇帝を軍上部に引き渡すんですか?」と問うと、タイラー艦長は「わからない。けど渡さないと思う。」と、のほほんと。方法はと問われると、それも分からない、と。「けど、ユリコさんもそっちのほうがいいでしょ?」と。正直、恰好よかったなぁ。

ああいうシーン、なんだろう、社会のルールとか組織のルール。
逆らうのはよくないのだけれど、「だってさ・・・」みたいな理由で破っちゃうの、恰好よく見えてしまった。ここは私が影響を受けたところ。そういう風に生きてみたくなった。精神的に、組織から自由であることの価値。社会常識と、いわゆるモラルが反駁したとき、さらっと言えてしまう格好良さ。

 

アニメ版では艦隊決戦はほとんど出てこなかった。
メカが格好いいのに活躍の機会は多くはなかったと思う。その中での見せ場、大艦隊同士が向き合う。惑星連合宇宙軍を率いるのは、オンボロ駆逐艦のそよかぜ。強運というか悪運を評価されて、まさかの指揮を執る。

対するは、ル・バラバ・ドム。これまた恰好いい軍人で、本来ならば主人公みたいな、まさに武人みたいな存在。

艦隊と艦隊が近づいて行く。
徐々に射程距離に入っていく、発砲命令はいつか。両軍がにらみ合う。
両軍の兵士は、その緊張感のあまりピリピリしているというシーン。もはや両艦隊は互いに射程圏内にある。

ついにタイラーが手をあげる、そして・・・
そのまま敬礼をした。
ドム提督も、してやられたとばかりに、しかし敬礼を返す。
結局、両軍は一発の弾も撃つこともなく、ほぼ艦隊同士のご挨拶のようになったというシーン。バカスカと弾を撃ち合うとばかりに思っていた子供としては、つまんねと思ったのだけれど、大人になって「それはそれで凄いことだな」とも思い返す。

そのシーンだけyoutubeにあった。

撃つ勇気もある。
だけれども撃たない勇気、撃たせない胆力みたいなものも感じた。
私には身に着け切れていない部分だけれど、ライトに見せつつ、瞬間的なものであれ、精神力の平衡性というか、スタビリティに敬意をもつようになったシーン。

 

礼服。
ある意味ではもっとも影響を受けている部分かも。

これは艦隊決戦の前だったと思うけれども、祝宴があった。
タイラーの勝利を祝ってのものではなかったろうか。
礼服で現れたタイラー、そのパーティー会場で服を汚す。意図的に、だ。
料理を手でつかみ、べとべとに汚れた手を真っ白な礼装で拭く。流石に異常行動で、その際のタイラーの行動は「怒りや切なさ」を感じさせるもの。

これは抗議だった。
世話になったハナー提督が亡くなっていたのだ。介護施設で寂しく、その生を閉じた。タイラーは祝宴に遅れたような気がするが、礼装を意図的に、やさぐれた様子で汚して見せたのは「何が祝宴だ?」という彼なりの抗議だった。

なんだろう、私はあれから恰好いい礼装を、自分が着ることは恰好わるいことというか、うーん、なんだろね、私は着なくていいやって思うようになった気がする。他の人が着たらいい。私もきっと汚してしまう。

上層部というか大本営というか、偉い人たちの祝賀。
その華やかな場で「よろべねぇよ」という時は、私もある。
だいたい舞台袖にいたりする、そういうときは。
(私もそれなりの場に出ることはある。)

 

アニメ版のラスト。

新造巡洋艦の阿蘇。
エピソードは様々に省いているが、なんだかんだでアニメだからいい感じにタイラー艦長は戦って行く。で、それを賞賛するべく、(老朽駆逐艦の)そよかぜから、新たな乗艦を得るに至る。最新鋭の巡洋艦だ。艦名は、阿蘇。

が、「いや、いいっす」みたいな感じでタイラーは断ってしまう。
なんだろう、その頃には子供であっても”なぜタイラーが、阿蘇に移らなかったのか”が分かるようになっていた。ここも私に影響を与えた部分かなぁ。私も駆逐艦乗りでいいと思っている。

タイラーの副長であった山本さん(山本権兵衛の子孫という設定)が阿蘇を任されることになるけれど、子供的には寂しさも覚えた。ヤマモトさんはタイラーとは違う道を歩むのか、と。けれどもそれは演技で、巡洋艦阿蘇は吹っ飛ばされる。駆逐艦そよかぜが「物理的に押しのけ」ての強行出港をしたのだ。

「いいんじゃない?それで。」と、そいうことを思ってしまったなぁ。

 

このアニメを見たとき、私は中学二年生だった。そして実際に中二病だった。
政治家とは、中二病をこじらせてなる職業だとも思ってて、「もしかして、俺は日本を救えるかもしれない」などとロクでもないことを信じてしまい、強く強く自分が信じるものだから、なんと周囲の人まで信じ込ませてしまい、やがて後援会組織となり、その(意味不明な)自信が一定値を超えた場合に、当選ラインの得票を超えて議員になってしまうのだ。少なくとも新人で当選した場合には、はっきり言えば「勘違いが行き過ぎた」結果であり、ただの民間人に過ぎない私が「いける、やれる、俺ならできる」と思うことは完全に誤まっていたと思う。

多くの新人候補がそうであり「きっとこの街を私が変えるのだ、救うのだ。その力が私にはある!」と、20代後半の私は本気で思っていたし、多くの候補が本気で自分のことをそう信じ込んでいるわけだが、絶対に間違っていて、それはこじらせた中二病である。ただ、信じる力が強すぎると、実際に街を救ってしまううえに、なんと日本までガチで救うことになったりするので、まぁ世の中とは不思議なものだと思う。

下記はニコ動にあがっていたOP。
私は、このOPをずっと見ていた。そして「この歌詞」を聴き続けてしまった。
VHSで録画して何度も何度も見た。

出だしから、ある意味ではいまの私の生き方を示している。

そんなわけで、中二病だった私が、中学二年生のころにはまったアニメは、私に深刻な影響を与えた。

やばい、駆逐艦って格好いい。
オンボロの老朽艦が、艦隊の指揮をとってるのって、すごい。
そこには運の要素もあるのだろう、けれども駆逐艦で勝つのって、なんかよくね?と。

新造巡洋艦の艦長のポストを蹴ってしまうの、恰好いい。
愛する駆逐艦で、のびのび行きつつ、無敵の強さ、これぞ中二病。

こちらはED。
たぶん私はこんな風になりたかった。

 

 

 

そろそろ小説版に入ろう。

こっちはエピソードはいいや、なんだろう、アニメとはキャラ設定が違う。
のち知ることになるが、アニメ化される際に原作の設定が大幅にいじられているようだ。小説版ではタイラーはもっとオッサンで、アニメよりもダメ人間だった。きもいオッサンみたいになっている。

ぶっちゃけアニメから入った者としては、かなり冷めた、最初は。
けれども引き込まれる、これが原作者の強みか、と。もちろんアニメ版よりものちの世界が描かれているわけで、その後のタイラー艦長の活躍もある。

初期においては運頼みだったが、やがて運も備えた知略の英雄になっていく。
性格は相変わらずなのだけれど。アニメ版の運要素を前面に押し出していたタイラーと違い、小説版では実力も備えていくのだ。やがて大統領になってしまう。宇宙も救った。

アニメから入って、(実は原作だった)小説版にアレルギー反応を起こしつつも、最終的には小説版のタイラーも大好きになってしまった。

文字、なんだけどね。
恰好いいんだわ、兵器が。文字なのにね。
マイナー兵器を愛するのが吉岡先生だったと思うけれど、信濃とかも出てくる。ヒラガーという工廠の責任者が出てきたり。その影響で何冊か「丸」という雑誌を買ったなぁ。この頃は高校生、お小遣いは2千円とか3千円、テストが凄まじく良かったときだけ5千円だった。丸とかは千円近くしたと思うから、何か月かに一回(そして、高校在学中に数冊のみ)しか買えなかった。

 

それでもアニメ版が、中学生の私に与えた影響って強くて、それは駆逐艦愛なのだと思う。別にさ、いいんだよ、強い艦も。乗れるやつは乗ればいいけど、私はさ、オンボロ駆逐艦を愛するタイラーが好きになってしまったし、それを「恰好いい」の基準に置いてしまったから、そういう風に生きることにしている。

だってそういう子供心における価値基準で、たぶん絶対のもので、どうせ一生変わらない。そもそも政治家の原風景なんて、そして心の活力とは「行き過ぎた中二病ハート」だと思ってる。だから中学二年生の私が見てしまったこと、思ってしまったことは、もはや今さら変えられない。だって、いまここにいる理由の一つというか、政治家としての私を形作った要素の一つなんだもの。

 

いわゆるラノベ。
たぶん吉岡平先生以外のラノベって、私は持ってなかったと思う。銀河英雄伝説は、友達から借りたか図書館で借りたかしたと思う。高校の時の友達だった気がする。

ヤンウェンリーに似た生き方なれども、その生き方が(いい加減さも描かれつつも)「身ぎれいさ」だとすれば、徹底的なまでの対極を行くのがタイラーだった。ラインハルトやヤンも恰好いいし、あれはあれで私に影響を与えたのだけど、それは高校生になってから。

無責任艦長タイラーは、私が中学生のときに見たアニメだ。

 

吉岡平先生が亡くなった。
報道で見た驚いた。ずっと年上だと思っていたのだけれど、62歳。
私が中学生や高校生のころにはすでに大活躍していたので、もっと年上だとばかり思っていた。

いまの私に強い影響を与えた作品を作った偉大なるクリエイターだった。
良くも悪くも、吉岡先生の著作に影響を受けた一人として、ここに哀悼の意を捧げます。
それは作品への愛を示すこと、それに他ならない。

 

 

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コメント (頂いたご意見は、他SNSに比較し最優先で目を通しております。)

  1. 波那 より:

     アニメって文字通り、世界を席巻してますよね。翻訳サイトなんかでアニメの話題が取り上げられると本当に、みんな良く知っていて感動を語っている人ばかりです。前に北欧のどの国だったか忘れたけれど高校生がクラスでアニメの中で使われてた歌を合唱していて、どう聴いてもムード歌謡だった!ので何が起きてるのか?大丈夫かしらと困惑してしまいました。
     中学高校の多感な時期に出会った書物や夢中になったアニメシリーズは人格形成に影響を与えて、その後の人生でも生き方の指針となってしまうのは仰る通りだと思います。長いこと不条理文学にドップリ浸かっていたので、抜け出すまでに時間がかかって…、今思えば、あれは左翼への道だったのかも知れないです。

  2. 一福岡県民 より:

    吉岡平氏が林明美名義でものした「C調アイドル大語解 アイドル用語の基礎知識」(昭和63年)、同「平成版」(平成元年)、大笑いしながら拝読しました。今でも家の書斎の本棚に並んでいます。
    ありがとうございました。合掌。

  3. ロード より:

    中二病のまま実力を兼ね備えてしまった小坪艦長はある意味無敵ですね。
    これからも応援しついていきます!

  4. 昭和51年生 より:

    いつも勉強させてもらいながら拝読しております。
    まさかこのブログで吉岡先生の訃報を知るとは思いませんでした。
    タイラーは義理と人情を大事にする人だったとおもいます。シリーズは発売日に直ちに買いに行ったものです。
    ご冥福をお祈りします。

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