匿名YouTuberがドキシング被害を受けた際に、地方議員と伴走するための手引書

記録票 / Kuma Record  ·  Sheet 01  ·  三権と警ら・時系列

この色は、職権のない者が自ら動いた箇所

件名 「闇のクマさん」ドキシング事案 期間 R7.06 - R8.07
主体 小坪慎也(行橋市議会議員) 職権 本件に関しては、なし

すべての表現者に勝利を

情プラ法改正の背景 ― 収益化停止処置の論点

匿名YouTuberがドキシング被害を受けた際に、
地方議員と伴走するための手引書

元暴力団組長や政党党首らにSNSで暴露された大型事案

職権のない地方議員が、三権を動かした。

起案と事務統括だけで、立法・行政・司法に届かせ、警らを動かした記録。

実名を含む投稿の表示回数(4日間)

291.8万件

令和7年6月12日の投稿。6月16日時点で公開状態が継続していた。

Abstract概要

生じた問題

令和6年2月公開の動画をめぐり、元暴力団組長を称する者がGoogleに発信者情報開示を申し立てた。Googleは異議訴訟まで行い約1年争ったが、訴外で取り下げに応じ、匿名YouTuberの氏名が開示される。令和7年6月12日、その氏名がX上で公表され、政党党首らの引用によって4日間で291.8万件の表示に達した。家族構成・子弟の通学先・勤務先の電話番号を晒す投稿が続発し、複数のプラットフォームを横断して拡散する。本人には味覚と聴覚の異常が生じ、報告書には自殺者が出る危険を否定できないと記された。ところが、開示を受けた者による情報の取扱いを定める情プラ法7条には、罰則がない。

行った対処

本件の急所は、この罰則のない7条にある01事案の骨格。まず着手したのは、被害者の生活と事務を肩代わりすることだった02被害者への伴走。そのうえで各党協議会と国会議員へ要望書を運び03対立法、この加害を「ドキシング」と名付けて省庁と事業者の監督ルートへ接続し04対行政、本人名義の要望書によって所管署の警ら強化を八日で立ち上げた05警ら強化。司法には介入せず、代理人へ渡す資料の作成に徹している06対司法。これらが議会の権能によらない理由は、地方自治法99条が本件では使えないことによる07議会の型が使えない理由。全体を貫くのは、職権のないものは自分でやらず、職権のある主体に書面を渡すという一貫した設計であり08全体設計、その到達点と限界は末尾に整理した09検証すべき点

情プラ法7条に罰則がないことの指摘

2

暴露から二日。弁護士の受任より十日早く、論点は立っていた。

暴露発生から、警ら強化の開始まで

8

要望書のFAX送信から所管警察署の対応開始までは、同日。金曜のうちに立ち上げ、週末を跨がせていない。

弁護士の受任まで

12

稲田朋美衆議院議員が同行。小坪は説明要員として同席した。

報告書の全文公開まで

18

使用権を主張せず、民間の再使用を許諾したうえで公開している。

省庁への調査報告を求める緊急要望まで

19

参院選の公示は、この二日後である。

当事者から受領した活動費・交通費

0

立法職が一方の当事者から金銭を得ない、という三権分立上の自己規律。上京は一往復あたり10〜15万円。

時系列 / Chronology

令和7年6月 ― 令和8年7月

左の記号は、その手続きが向かった先。警察は行政権の現場であり、三権と並ぶ権能ではない。手続きの欄をクリックすると、該当する本文へ移動する。朱のハッチは、職権を持たない者(小坪)が起案・発信・同席した箇所を示す。

期日 手続き 起案
第Ⅰ期防御令和7年6月12日 - 6月22日
1 R7.06.12 猫組長氏が実名を明示して提訴を公表。百田尚樹氏・有本香氏が引用拡散。小坪は行橋市議会の一般質問当日で議会拘束
2 R7.06.13 東京都議会議員選挙 告示
3 R7.06.13 夜に代理人候補が確定。警ら強化の方針を緊急会議、複数案を検討
4 R7.06.13 小坪が自らのXで発信を開始。攻撃が闇のクマさん一人に集中する状態を崩すため、インフルエンサーとして前に出て批判の一部を引き受ける
5 R7.06.14 情プラ法7条に罰則がないことを、この時点で公然と指摘。以後の報告書・要望書はすべてこの条文を軸に組まれる
6 R7.06.16 上京。請願書を起案するも紹介議員が間に合わず提出断念
7 R7.06.17 都議選の応援という形で、衆議院議員・木原稔氏と面会の時間をつくり、被害者本人が自らの苦しさを直接証言。あわせて請願から要望書への転換を完了
8 R7.06.18 党本部。各党のSNS関係協議会の動きに、要望書と報告書を接続
9 R7.06.19 移動中および深夜に「警ら強化を求める警察相談の円滑化を求める要望」を起案・完成
10 R7.06.20 本人が自署・FAX送信。所管警察署が即日で警ら開始。土日を跨がせず
11 R7.06.22 都議選 投開票
第Ⅱ期攻勢令和7年6月23日 - 7月20日
12 R7.06.23 報告書(現行版)完成。以後、すべての要望の添付資料となる
13 R7.06.24 弘中惇一郎弁護士が受任。衆議院議員・稲田朋美氏が同行し、小坪は説明要員として同席
14 R7.06.25 四国某県の所管警察署へ。兵庫県の自民神戸市議が自走合流し、県境を越える情報を紙の要望書で持ち帰る
15 R7.06.30 報告書を全文公開。使用権を主張せず、民間の再使用を許諾
16 R7.07.01 公明党・秋野公造参議院議員へ緊急要望。省庁からの調査報告と、各社の是正策報告を求める
17 R7.07.02 要望書の書式と警察対応の顛末を公開。全国標準化を企図し所管署に事例聴取を申入れ
18 R7.07.03 第27回参議院議員通常選挙 公示。緊急要望は、この二日前に提出を終えている
19 R7.07.07 物理的ドキシング(生活圏の施設への氏名入り掲示)。所管署が夜間・所管外ながら即日で除去と物証保全
20 R7.07.10 緊急要望を全文公開。プラットフォーム側から国会議員へ社としての見解が示される
21 R7.07.20 参院選 投開票
第Ⅲ期司法決着と反転令和8年
22 R8.01.13 東京地裁が判決言渡。1100万円の請求を棄却、訴訟費用も原告負担。控訴期限の経過により確定
23 R8.01.27 第51回衆議院議員総選挙 公示
24 R8.02.08 衆院選 投開票。判決の確定を待ち、有利になり得る情報の公表は見送られた
25 R8.04.06 判決文全文を公開。確定を待って公表(衆院選前の公表を見送り)
26 R8.07.17 公職選挙法・情プラ法の一部改正法が成立・公布(令和8年法律第58号、令和9年3月1日施行)。大規模プラットフォーム事業者への義務付けを規定。総務省の有識者会議では「手続の過程で得た情報の適切な取扱い」が主な検討課題として明記される
27 R8.07.21 闇のクマさん側が東京地裁に提訴。各330万円の賠償・投稿の削除・謝罪投稿を請求。同日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、情プラ法7条の解釈が公の争点として立ち上がる
28 R8.07.24 弁護士ドットコムニュースが配信。「YouTuber『闇のクマさん』、猫組長氏と百田尚樹氏を提訴『開示請求で得た実名をSNSで公表された』」。開示手続きで得た情報をどこまで公表してよいかが新たな論点として浮上していること、総務省の検討会でも二次被害が議論されていることが併せて報じられた
立法・政党
行政・事業者
警ら(行政権の現場)
司法
言論・発信
報道
職権のない者による起案・発信・同席

01事案の骨格 ― 罰則のない7条

何が起き、どこに穴があったのか。

令和6年2月公開の動画をめぐり、猫組長氏がGoogleに対して発信者情報開示命令を申し立てた。Googleは異議訴訟まで行い約1年争ったが、訴外で取り下げに応じ、氏名が開示された。

令和7年6月12日、猫組長氏が実名を明示してX上で提訴を公表。同日、日本保守党代表の百田尚樹氏がこれを引用して実名に言及し、事務総長の有本香氏も拡散した。4日間で291.8万件の表示に達し、家族構成・子弟の通学先・勤務先の電話番号を晒す投稿が続発した。

構造上の急所は情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)第7条である。開示を受けた者は、その情報をみだりに用いて発信者の名誉や生活の平穏を害してはならないと定めるが、罰則がない。小坪議員はここを事案の核心に据えた。

判定

刑法では裁けない。ならば動かせるのは、立法による手当て、行政と事業者への監督、そして現場の警らだけになる。

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02被害者への伴走 ― 生活と事務を肩代わりする

最初に確定させたのは相手方の悪質性ではなく、本人の状態だった。

打った手

  1. R7.06.13〜生活

    スマホを見ないよう伝える。攻撃の只中で投稿を追い続ければ消耗は止まらない

  2. 連日心理

    一日にひとつ、目に見える成果を出して伝える。進捗そのものを安心の材料にする

  3. R7.06.13言論

    議員自身がXで前に出て、批判の一部を引き受ける。標的を一人にしない

  4. R7.06.19事務

    聴き取りのうえ、本人名義の要望書の文案を起案。署名だけを本人に残す

  5. 全期間距離

    本人の個人情報は預からない。流出時に自らが調査対象となれば、伴走そのものができなくなる

状態の見立て

最初に確定させたのは、相手方の悪質性ではなく本人の状態だった。心身のショックは深く、味覚障害と聴覚障害の自覚があった。報告書には「一部の者は自殺を考えたことがある」「類似の手法で自殺者が出る危険性が否定できない」と明記されている。放置すれば死に至る危険がある、というのが当時の判断である。

そこで、診断書を取るためではなく本人の身体のために、ただちに通院してもらった。順序を取り違えなかったことが、この案件の性格をよく表している。

生活の側から支える

  • スマホを見ないよう伝える。攻撃の只中にいる本人が投稿を追い続ければ、消耗は止まらない
  • 一日にひとつ、目に見える成果を出して伝える。先が見えない状態こそが人を追い詰めるため、進捗そのものを安心の材料にする
  • 身辺の安全は、自宅・子弟の通学路・勤務先の三点に絞って警ら強化を求める
  • 本人の個人情報は預からない。万一の流出時に自らが調査対象となれば、伴走そのものができなくなる

事務を代われる範囲で代わる

炎上の渦中で精神的に追い詰められた当事者に、行政手続きの様式を整えさせることは現実に不可能である。警察署の窓口で自分の状況を筋道立てて説明することも、同じく難しい。だからこそ、聴き取りのうえで小坪議員が要望書の文案を起案した。

ただし線は引いている。要望の主体はあくまで本人であり、署名も本人。報酬は受け取らず、交通費すら請求していない。非弁行為とならないよう法律事務そのものには立ち入らず、様式の作成と説明の補助にとどめた。弁護士の受任前に被害届等をまとめなかったのも、代理人の判断を縛らないためである。

Front line前線に立つ ― 標的を一人にしない

暴露が起きた令和7年6月12日、小坪議員は行橋市議会の一般質問当日であり、終日議会に拘束されていた。それでもその日のうちにXでの発信を始めている。

意図は明快である。攻撃が闇のクマさん一人に集中する状態を崩すこと。自らインフルエンサーとして前に出て、批判の一部を引き受けた。市議の職権では直接どうにもできないと繰り返し述べながら、それでも黙らなかった。

そして同じ週のうちに、情プラ法7条に罰則がないことを公然と指摘している。暴露から2日である。以後に起案される報告書・要望書・緊急要望は、すべてこの条文を軸に組まれることになる。前線での発信は擁護であると同時に、論点の設定でもあった。

Fieldその後 ― 三週間ぶりに、動画が出た

暴露から3週間あまり。活動を止めていた本人が、謝りながら動画の告知に戻ってきた。伴走の目的は、この一投稿に尽きる。

この節の要点

伴走とは、代わりに戦うことではない。本人が倒れずに立っていられる状態を作り、本人にしかできない一署名だけを残して、あとを引き受けることである。

03対立法 ― 締切を制度から取る

請願は間に合わなかった。要望書に切り替え、締切を選挙日程から逆算した。

打った手

  1. R7.06.17衆議院議員

    都議選の応援という形で木原稔氏と面会の時間をつくり、被害者本人が直接証言。請願から要望書への転換を完了

  2. R7.06.18各党協議会

    党本部で役員向け要望書を提出。各党のSNS関係協議会の動きに、報告書ごと接続

  3. R7.07.01友党の党役員

    公明党・秋野公造参議院議員へ緊急要望。参院選の公示二日前

  4. のち衆参の総務委員長

    本件を報告。委員長を通じて総務省官房から書面で回答を得る

やったこと

6月20日、「民間人の退避が完了した、事務速度を倍にあげる」と宣言して防御から立法アプローチへ移行した。7月1日、公明党の秋野公造参議院議員へ緊急要望を提出。趣旨は「友党内部における党内調整の方法に関する指南」であり、その場で各方面への連絡が開始されている。自民党側については「より先行している」とのみ公表し、詳細は伏せた。

狙った効果

参院選の公示日を超えると情プラ法4条に鑑みて決裁が遅れる、という締切設定である。締切を感情ではなく外部の制度から取るという、彼の常套手段がそのまま出ている。

到達点 ― 論点が、公式の検討課題になった

令和8年7月17日、公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法の一部を改正する法律が成立・公布された(令和8年法律第58号、令和9年3月1日施行)。大規模プラットフォーム事業者に、選挙の公正に対する悪影響を軽減する措置と、その実施状況の年1回の公表を義務づけるものである。本件で個人情報が拡散されたYouTubeとXは、いずれもこの指定事業者に含まれている。この改正そのものは選挙に関する規律であり、7条への罰則新設ではない。7条の問題が実現したわけではない。

動いたのは別の場所である。総務省の有識者会議において、主な検討課題の第3として「手続の過程で得た情報の適切な取扱い」が立てられた。そこには「手続の過程で得た情報を用いた新たな権利侵害の発生の防止」という項目が置かれ、発信者情報の開示を受けた者について、どのような対応策が考えられるかが論点として明記されている。本件が最初の週から指摘し続けてきた論点そのものである。

この明記に至る過程で、本件は衆参両院の総務委員長へ報告されている。所管が総務省であることから、委員長を通じて総務省官房より書面で回答を得ている。要望が資料として受け止められ、公式の回答文書という形で返ってきた。一定の立法成果は、この段階まで到達している。

到達点の見立て

罰則の新設には至っていない。ただし、罰則がないという指摘は、いまや総務省の検討課題として文書に載っている。個人の訴えから、制度の議題へ移ったということである。

Field提出の記録 ― 各党協議会へ

各党協議会の役員向け要望書(令和7年6月18日付)。提出を終えた段階で、

各党協議会の役員向け要望書(令和7年6月18日付)。提出を終えた段階で、タイトルの一部だけが公開された。

地元議会の本会議に出席したうえで、同じ週に上京と提出を終えている。

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8頁目「有識者会議における主な検討課題」の3に、開示を受けた者の情報の取扱いが論点として立てられている。9頁目が令和8年7月17日成立・公布の改正法の概要。

次の一手 ― 司法の判断を、立法と行政に渡す

令和8年7月の提訴には弘中惇一郎弁護士が代理人として就いており、判決は相当に注目されることになる。争われているのは、開示請求で得た情報をどこまで使ってよいのかという点、すなわち7条の解釈そのものである。小坪議員は弘中弁護士より、訴状を国会議員に対して使用する許諾を得ている。

方針は二段構えである。ひとつは、司法権の判断を立法の基礎とすること。訴訟の行く末と判決文を、検討課題を具体的な条文に落とし込む際の論拠として用いる。もうひとつは、同じ判断を既存法の運用の問題として行政権に持ち込むことである。罰則がなくとも、司法が7条の趣旨をどう読んだかが示されれば、省庁と事業者に対する要請の根拠になる。

資料この節で用いた書面(2点)開くと本文を表示

04対行政 ― 呼び名を与え、収益に触れる

刑事で裁けない以上、行政監督と事業者の自主規制へ流し込む。

打った手

  1. R7.06.23〜用語

    この加害を「ドキシング」と名付け、省庁・国会議員・報道各社に同じ語で説明し続ける

  2. R7.07.01省庁(経由)

    プラットフォーマー横断のドキシング事案として、省庁が調査し報告することを求める緊急要望

  3. 事業者

    暴力団名を冠した暴露事案への即応策と、各運営会社からの是正策の報告を要求

  4. R7.07.11公開

    YouTubeが国会議員に示した運営方針の資料を公開。収益化のしくみを含む

  5. 自民党側与党

    政令市の有力議員らを通じて情報をインプット

やったこと

本件を当初から「ドキシング(Doxing)による重大インシデント」として定義した。報告書のURLが最初から incident-report であった点に、その先行性が表れている。

要望事項は三点。①プラットフォーマーを横断したドキシング事案として省庁が調査し報告を求めること、②具体的な暴力団名を冠した暴露事案への即応策、③各運営会社に是正策を報告させること。

呼び名を与える

当時、この語は国内でほとんど流通していなかった。個人情報の暴露は「晒し」や「特定」と呼ばれ、迷惑行為の一種として個別に処理されるにとどまっていた。国際的には確立した加害類型であり、情報流通の分野に携わってきた者にとっては一般的な用語であるにもかかわらず、である。

小坪議員は最初の報告書から一貫してドキシングと呼び、物理的ドキシング・オンラインドキシング・ドックスウェアという類型区分まで示したうえで、省庁にも国会議員にも報道各社にも同じ語で説明し続けた。日本国内の個人情報暴露事案に「ドキシング」という名前と、それが問題行為であるという認識を定着させたのは、この一連の発信である。のちに発生した類似事案でも、この語が用いられるようになっていく。

語が定着すれば、事案は個人間のトラブルではなく、類型化された加害として扱える。呼び名を与えることは、制度の入口を作ることである。

狙った効果

刑事で裁けない以上、行政監督と事業者の自主規制ルートへ流し込む。法がなくても運営会社との協議の建て付けは作れる、という発想である。

与党をまとめる ― 自民と公明、二つの経路

自民党側には、政令市の有力議員らを通じて情報をインプットしていた。当時は自公政権であり、与党をまとめること自体に意味がある。

それ以上に効いたのは、衆参の総務委員長がいずれも公明党であったという事実である。所管が総務省である以上、委員長が動きやすい形を作らなければ話は前に出ない。そこで党役員である参議院政策審議会長の秋野公造議員に対し、参院選の直前という最も動きにくい時期に緊急要請を行った。この要望をもって、公明党は政党単位で援護に入ったと言っていい。

のち、総務委員長に対して行った要望について、総務省官房からの回答を委員長経由で得ている。本件について明確な問題意識が示されており、情報のインプットには成功した。

収益化停止を、争点にする

この案件で一貫して狙われているのは、収益化の停止である。報告書の表題そのものが「複数のプラットフォーマーを横断した収益構造」を含んでおり、初期の要望書の段階から収益化に言及している。各運営会社に是正策の報告を求めたのも、削除や開示ではなく金の流れに触れるためであった。令和7年7月11日には、YouTubeが国会議員に示した運営方針の資料を公開している。収益化のしくみを含む内容である。

令和8年7月の記者会見では、闇のクマさん本人が、自らも収益化を受ける立場であることを前提としたうえで、収益化停止こそが最も効果的な措置であると述べた。被害者自身が、自分にも及びうる措置を求めたことになる。

削除も開示も、起きたあとの救済にとどまる。これに対し収益化の停止は、加害の動機そのものに触れる。刑事で裁けない領域に経済的な帰結を持ち込む、という筋である。

そして令和8年の改正法において、総務大臣が策定する指針に盛り込まれることが想定される「軽減措置の例」の筆頭には、「利用規約に違反した場合の収益化停止措置」が挙げられている。選挙運動に関する各党協議会での議論を経たものであり、文脈は選挙の公正である。それでも、収益化停止という手段が政策の俎上に載った意味は小さくない。情プラ法の運用に影響を与えるための争点として、この論点は顕在化しつつある。

Field要請の記録 ― 友党への緊急要望

参院選の公示直前。情プラ法4条に鑑みて決裁が遅れることを見越し、公示前に提出を終えている。

資料この節で用いた書面(2点)開くと本文を表示

Result実績

  • 要望後、あるプラットフォーム側から社としての見解が国会議員に示された(因果関係は本人も「不明」と留保している)
  • 7月11日には、YouTubeが国会議員に示した運営方針資料を公開
  • 令和8年時点で、総務省の検討会において、開示手続きで判明した情報がSNSで拡散されることによる二次被害が議論されている。令和6年のプロバイダへの発信者情報開示請求は15万4484件で、増加傾向にある
資料YouTubeが国会議員に示した運営方針(実際に小坪が公開したもの)開くと全8頁を表示
YouTube資料 1ページYouTube資料 2ページYouTube資料 3ページYouTube資料 4ページYouTube資料 5ページYouTube資料 6ページYouTube資料 7ページYouTube資料 8ページ

令和7年7月11日公開。選挙、偽・誤情報、収益化のしくみを含む運営方針として、YouTube側から国会議員らに示された資料。全8頁。

05警ら強化 ― 要望の主体を本人に置く

警察は行政権の現場であり、三権と並ぶ権能ではない。だから作法が変わる。

打った手

  1. R7.06.19起案

    「警ら強化を求める警察相談の円滑化を求める要望」を完成。個人情報欄は空欄のまま

  2. R7.06.20所管署

    本人が自署してFAX送信。即日で警ら開始。金曜のうちに立ち上げ、週末を跨がせず

  3. R7.06.25他県警

    四国某県の所管署へ。兵庫県の自民神戸市議が自走合流し、県境を越える情報を紙で持ち帰る

  4. R7.07.02標準化

    要望書の書式と対応の顛末を公開。所管署に事例聴取を申入れ

やったこと

最初に確定させたのは「市議は警察に要望できない」という職権の限界だった。そのうえで要望主体を被害者本人に置き、小坪議員は起案と同席だけを担う形にしている。要望書の宛先に自分の名を入れることで、説明役としての資格だけを得る設計である。

個人情報欄は空白のまま起案した。本人の個人情報を保持すれば、流出時に自らも調査対象となり、事案の伴走ができなくなるからだ。

狙った効果

診断は明快だった。対応が遅れる真因は警察の怠慢ではなく、被害者が自分の状況をうまく説明できないことにある。県警本部から離れた小規模自治体では知能犯係の配置も薄い。したがって求めたのは捜査ではなく「警察相談の円滑化」であり、要求も自宅・子弟の通学路・勤務先の三点に限定し、学校には対象児童を伏せる条件まで付けている。

掲示物実際に警察に回収された掲示物開くと画像を表示
生活圏に掲示されていた掲示物(マスク処理済み)

マスク処理済み。ハンドルネームと実名を併記したうえで、他の複数のインフルエンサーの名を混ぜ、一覧の体裁をとっている。これが本人の生活圏、最寄りの駅周辺の施設に掲示されていた。一見すると悪質に見えない点が、この手法の悪質さである。所管署は夜間・所管外にもかかわらず、即日で除去と物証の保全を行っている。

Field現場の記録 ― 所管署と、その後

県境を越えられない自治体警察の壁を、他県の地方議員が現地へ出向いて紙で越えた。

守られた側からの言葉。警ら強化の成果は、最終的にここで測られる。

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Result実績

  • 暴露発生から8日、要望書のFAX送信から即日で警ら開始。金曜のうちに立ち上げ、週末を跨がせなかった
  • 県境を跨げない自治体警察の構造的欠陥を、他県の地方議員が現地へ出向いて紙で持ち帰るという迂回で突破
  • 7月上旬の物理的掲示は、夜間・所管外にもかかわらず即日で物証保全と除去
  • 書式を全国標準化する意図で、所管署に事例聴取を申し入れ

この領域で一貫しているのは、国家公安委員長経験者に頼らなかったことである。職権発動は権力濫用の批判を招き、実務上も動かない。この読みは正確で、手続きの正当性を毀損せずに速度だけを出している。

06対司法 ― 介入しないことの設計

司法に対しては、何もしないことが最も重要な作業だった。

打った手

  1. R7.06.24代理人

    稲田朋美衆議院議員が同行し、弘中惇一郎弁護士が受任。小坪は説明要員として同席のみ

  2. 資料

    事案の全体像を4頁の報告書に圧縮して提供。被害届等はまとめず、白紙のまま渡す

  3. 全期間金銭

    交通費・活動費を一切受け取らない。片方の当事者から金銭を得たと言われないため

  4. R8.01〜04公表

    判決確定まで、自陣営に有利な情報の公表を止める

やったこと

  • 稲田朋美議員とともに弘中惇一郎弁護士へ依頼。受任の場に説明要員として同席
  • 事案の全体像を4頁の報告書に圧縮し、受任判断の材料として提供
  • 弁護士受任前に被害届等をまとめることを避け、「白いキャンパスを渡す」ことを優先
  • 交通費・活動費を一切受け取らない。片方の当事者から金銭を得て裁判を手伝ったと言われないため
  • 判決確定まで、自陣営に有利な情報の公表を止めた

狙った効果

三権分立の形式を厳守することで、「立法職が司法に介入した」という反撃の口実を消す。同時に、開示請求制度の濫用に対しては立法側から釘を刺す。

Field会見の記録 ― 司法記者クラブ

令和8年7月21日、東京・霞が関の司法記者クラブ。冒頭、弘中弁護士より訴

令和8年7月21日、東京・霞が関の司法記者クラブ。冒頭、弘中弁護士より訴訟の概要が説明された。

数々の著名事件を担ってきた弁護士が、被り物をした匿名YouTuberの隣

数々の著名事件を担ってきた弁護士が、被り物をした匿名YouTuberの隣に着座する。匿名表現者の権利が司法の場に持ち込まれた一枚。

訴状より。争点は損害額ではなく、匿名表現の自由そのものに置かれている。

訴状より。争点は損害額ではなく、匿名表現の自由そのものに置かれている。

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Result実績

  • 全面勝訴。社会的評価が低下したとは判断できないとして、その他の点を判断するまでもなく請求に理由がないとされ、訴訟費用も原告負担
  • 判決文に、日本保守党の広報活動を行っている者であること、および暴力団の具体的な組名と役職が、争いのない事実として記載された。訴状に自ら書いた属性が、公文書として固定された
  • 開示請求が通ったこと自体は違法性の認定ではない、という点が司法判断として明示された
  • 令和8年7月21日、攻守を入れ替えて提訴。開示で得た情報の公表が情プラ法7条に反するかが争点となり、立法課題そのものが司法の場に載った
この領域の最大の成果

判決そのものより、「確定判決文という一次資料を、立法側の論拠として使える形にした」ことである。以後、行政と事業者への働きかけに確定判決を添付できるようになった。

07議会の型が使えない理由

いつもの手が封じられていた。それは選択ではなく、制度上の可否である。

小坪議員の標準ルートは、①自分の議会の一般質問で答弁を取り、議事録という公文書を製造する、②意見書を採択させる、③全国の議会へ意見書案を発送する、という順序である。外国人の扶養控除や年金脱退一時金は、この型で国政まで運ばれた。

本件では、この型が使われていない。ただしこれは選択の問題ではなく、制度上の可否の問題である。

前提の訂正 / Correction

地方自治法99条の意見書は、当該地方公共団体の公益に関する事件について議会が国等に提出する制度であり、自治体の事務との接点が要る。本件は市外の民間人個人が受けた被害であり、加害の場はSNS、所管は総務省である。行橋市の事務にも公益にも接続する筋がない。したがって99条は本件では使えない。議決権を行使する議会人としてではなく、一人の政治家として動くほかなかった、というのが事の順序である。

結果として、彼が一次資料の最上位に置く「議事録」が本件では一本も作れない。その空白を埋めたのが、①本人署名の要望書の実物、②報告書、③確定判決文の三点である。いずれも日付と作成者が特定でき、後から動かせない。議事録の代用として、動かせない紙を三種類そろえたと読むのが正しい。

もっとも、代償は残る。議会の権能に載らない以上、成果は属人的な人脈と事務能力に依存する。本人も、日ごろの付き合いのない者にはこの書式は役に立たないだろうと明記している。標準化を掲げる以上、再現性の課題はここに由来する。

08全体設計と検証 ― 起案と事務統括に徹する

四つの相手に対して、一つの論理だけが貫かれている。

三権と現場の警ら、そのすべてを貫く論理は一つである。職権のないものは自分でやらず、職権のある主体に「書面」を渡す。警察には本人名義の要望書、司法には弁護士への報告書、行政と立法には国会議員経由の要望書。担うのは一貫して起案と事務統括だけで、実行主体には決してならない。

紙にまとめて所定のルートを通さなければインプットとは看做されない、という彼の持論が、本件では最も純粋な形で実装されている。工程表の朱のハッチが示すのは、権限ではなく事務量である。

検証すべき点

  • 立法成果が未達である。「言うだけで終わらせない」が本人の基準である以上、罰則新設または法改正まで到達して初めて完結する。現時点は入口である
  • 報告書に推測が混じっている。ドックスウェアの可能性、訴訟自体が空砲であるといった記述は語尾で標識されてはいるが、報告書という様式に載せた以上、争点化される余地を残す。全面勝訴という結果に助けられた面は否定できない
  • 成功要因の再現性が低い。書式は公開できても人脈は公開できない。06で述べたとおり、これは議会の権能を使えない案件の構造から来ており、標準化の最大の障壁として残る

逆に最も評価されるべきは、判決確定まで公表を待った判断である。衆院選前に公開すれば味方の議員に有利だった局面で、当事者の法益を優先した。筋を自陣営の都合の上に置くという優先順位が、実際に損を引き受ける形で機能した数少ない実例である。

09結語 ― 速度と、再現性

速度は例外的だった。ただし、その半分は過去の蓄積の回収である。

Measured暴露発生からの日数

Xでの発信開始・代理人候補の確定1
情プラ法7条に罰則がないことの指摘2
国会議員への直接証言5
各党協議会への接続6
警ら強化の開始8
弁護士の受任12
他県警への引継ぎ(現地訪問)13
報告書の全文公開18
省庁への調査報告を求める緊急要望19
01020日

令和7年6月12日を起点とする。要望書のFAX送信から所管警察署の対応開始までは、同日。この間、6月13日から22日までは都議選の期間中であり、6月12日・20日は地元議会の日程が入っている。

議会に出席しながらの八日間

6月12日は一般質問の当日、13日は委員会審査ののち県外出張、20日は本会議である。加えて13日から22日までは都議選の期間中にあたる。議会に出席しながらこの速度であり、単純な日数以上の密度がある。

最も効いた判断

八日という数字よりも、6月20日が金曜日であったことのほうが重い。土日を跨がせないという一点に速度を集中させた判断である。弁護士は未受任、本人は自らの状況を説明できる状態にない。その週末を一人で過ごさせればどうなるか。ここを読み切って逆算したことが、この案件で最も高度な技術だった。

速さの出どころ

この速さは当日の瞬発力ではない。開示請求の簡素化に際してレビューを書いていたこと、年金脱退一時金の件で稲田事務所や国会議員との関係が既にできていたこと、闇のクマさんとの信頼が事前にあったこと。準備が終わっていたから速かったのであり、本人も事前に準備はしてあったと述べている。

速度だけではない

局面ごとに時間の使い方を変えている点こそ、最も評価されるべきかもしれない。

  • 警ら ── 速度。八日、そして土日を跨がせない
  • 立法・行政 ── 締切設計。参院選公示の二日前に提出を終える
  • 司法 ── 待機。衆院選の公示前に出せば有利だった局面で、判決の確定まで公表を止める

速度が正解でない場面では、速度を出していない。すべてを速くやる者はよくいるが、待つべきところで待てる者は少ない。

結語

速度は、地方議員としては相当に例外的である。ただしその半分は過去の蓄積の回収であり、残る半分が当日の判断である。伸ばすべきは速度ではなく、再現性のほうだ。

同じ速度を出すことは難しいかもしれない。それでも、要望書と報告書の書式はすでに実録資料として公開されている。九十九条の意見書を扱った経験のある三期生以上の地方議員であれば、類似の形での伴走は可能である。だからこそ、手引書として公開する。

資料 / Sources

  1. 報告書「元暴力団を称する者から発信者情報開示請求を受け、個人情報を匿名のユーザー名と紐づけられて政党党首らにSNS上で拡散された経緯、および複数のプラットフォーマーを横断した収益構造」令和7年6月23日付 — samurai20.jp/2025/06/incident-report/
  2. 【警察対応】警ら強化を求める警察相談の円滑化を求める要望(要望書実物・日程を含む) — samurai20.jp/2025/07/ihoyugai-3/
  3. 【緊急要望】ドキシングによる重大インシデントとして省庁から調査報告を求める緊急要望 令和7年7月1日付 — samurai20.jp/2025/07/incident-report-request/
  4. 【ドキシング事例】ポスター状のものが生活圏周辺に物理的に設置されていた件、ならびに対応状況 — samurai20.jp/2025/07/doxing/
  5. 【闇のクマさん、全面勝訴】判決文(全文・確定) — samurai20.jp/2026/04/kuma/
  6. 総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」 — soumu.go.jp
  7. 令和8年7月21日提訴・同22日記者会見に関する報道(弁護士ドットコムニュース ほか)

本稿は、公開されている報告書・要望書・判決文および報道をもとに、立法・行政・司法の三権と、現場の警らごとに時系列で整理した記録票である。

職権の所在に関する記述は、すべて筆者が自らの権能の範囲を明示するために付したものであり、警察・司法の内部判断に立ち入るものではない。

周知にご協力ください。

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